研究概要 |
可解量子スピン鎖を代表するXXZ鎖(およびXYZ鎖)、さらに相関電子系の代表的な可解模型である1次元ハバード模型に関して、固有スペクトルの縮退等を数学的に厳密な手法により研究した。ハバード模型に関しては、ストリング仮説に基づく励起状態の記述を数学的に厳密に裏付ける研究を行った。(T.Deguchi他,Phys.Reports(2000))。1次元XXZ模型に関しては、異方性変数Δがある離散値の場合(Δ=cos(2πP/N))、XXZハミルトニアンがsl(2)ループ代数という無限次元リー代数の生成演算子と交換することを証明した(T.Deguchi他,J.Stat.Phys.(2001))。ここでNとpは2以上の任意の自然数である。Δを変化させるとこの離散値において系の対称性は突然拡大し、多数のレベル交差が生じる。その縮退度は格子サイズLに関して指数関数的に増大する。例えば、2のL/N乗のN倍の縮退度の場合がある。L=12、N=3のとき、2の4乗の3倍は48である。このように次元の大きな準位縮退が生じるのは、sl(2)ループ代数が無限次元の対称性を持つためである。縮退固有空間はsl(2)ループ代数によって一個のベーテ固有ペクトルから生成される。例えば48次元の縮退固有空間の中で、1次元だけはベーテ固有ベクトルで表され、残りの47次元はこのベクトルからsl(2)ループ代数を作用させて導かれる。sl(2)ループ代数によって導かれる固有ベクトルは、一般にはベーテ固有ベクトルの形に表されない。Δに関するフローを考えると、Δの離散的特殊値において見かけは同じ対称性を持つ非常に多数の固有状態のエネルギー準位が交差する。この現象を量子力学のレベル反発則の反例と解釈することもできる。さらに楕円関数の量子群を用いて、XXZ鎖の縮退と同様な縮退がXYZ鎖にも存在することを、数学的にほぼ厳密に証明した。(T.Deguchi, J.Phys.A(2002))
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