研究概要 |
膜面垂直方向に磁化容易軸を持つ,Bi置換ガーネット薄膜を試料にして磁区構造パターンに関する研究をおこなった.この組成の試料は,ファラデー効果により磁区構造が偏光顕微鏡で直接観察可能である.まず,今までに行った低周波領域での緩和に伴うパターン変化実験結果の解析を進めた.1Hz以下の交番磁場下で迷路状構造がストライプ状パターンに変化する場合のパターン全体の相関長の変化,ドメインの分岐点や終端などの欠陥分布の解析を行った.パターンの相関長は交番磁場を加えることにより最初緩やかにべき関数的に増加するが,緩和がある程度進んだ段階から速さが増加する.これは,パターンに最初含まれる小さな渦状構造の消滅に関連している.印可する交番磁場の振幅によって,この渦構造の消滅までの時間が異なるため,緩和速度が変化する時間も異なるが,速度変化点でのパターンは同様な相関長を持つことが明らかとなった.パターンの欠陥も初期状態では均一に分布しているが,緩和が進むと特定の領域に集中する.初期の緩和がゆっくりと進行している領域では,欠陥間の距離を規格化すると分布は同一であることが分かった.さらに,交番磁場の周波数及び振幅を増加させた場合,ストライプが異なる方向に平行に揃った領域間での競合が発生する.この時,ストライプが平行に揃った各ドメインサイズはは交番磁場振幅が大きくなると減少する.これは相転移点近傍の高温側で見られるのクラスターサイズの問題に関連していると思われる.より高周波および大振幅領域で,パターンの時間平均コントラストの解析から動的構造相転移の検証を試みたが,磁場強度の不足等によりその存在の確証を得るには至らなかった.しかし,時間平均後にも構造を持つことより,外部交番磁場の周期に比べて長周期な自発構造が発生していることを確認した.
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