研究概要 |
第一原理分子動力学法による計算機シミュレーションを用いて、液体砒素・カルコゲン混合系おける非金属・金属転移の機構を調べた。本年度は、特にAs_2Se_3、As_2Te_3に対して計算を行い、平成12年度に行ったAs_2Se_3の計算結果との比較検討も行った。本研究により、以下のことを明らかにした。 1)液体As_2S_3、As_2Te_3の非金属・金属転移およびAs_2Se_3との比較について As_2S_3における金属化の機構は、As_2Se_3におけるものと類似である。温度上昇に伴い、三次元ネットワーク構造から、1配位をとる硫黄と2配位をとる砒素を多く含む一次元的鎖構造へと変化する。このような構造変化と同時に、低配位数のイオンの周りにフェルミレベル近傍の電子状態が出現し、金属化が起こる。また、硫黄から砒素へ電荷移動が見られる点もAs_2Se_3と同様である。これに対し、As_2Te_3における金属化の機構は、As_2S_3、As_2Se_3とは異なっている。温度上昇に伴う構造変化においては、鎖構造への転移は見られず、高温まで2配位をとるテルルと3配位をとる砒素が多く存在する。フェルミレベル近傍の電子状態に対しては、テルルの周りの状態が大きく寄与し、砒素へ電荷移動はほとんど起こらない。 2)化学量論的組成にない液体砒素・カルコゲン混合系の非金属・金属転移について As_xS_<1-x>(x=0.4,0.5,0.75,1.0)に対する計算を行い、砒素濃度の増加に伴う構造と電子状態の変化を調べた。砒素-砒素間の共有結合は、砒素-カルコゲン間または、カルコゲンーカルコゲン間の共有結合よりも弱い。従って、砒素の導入は、共有結合の切断を容易にし、金属化への転移温度を下げることになる。
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