研究概要 |
今年度は,当初は破壊力学を考慮した数値シミュレーションを行う計画であったが,国内の強震観測網で良質の観測データが得られていることを考慮し,前年度の成果を踏まえて,観測データの解析を行い,震源過程と強震動の関係について考察した。 ●2000年三重県中部地震(M=5.5)の解析 波形インバージョンにより断層面上のすべり量分布を求めた。また,震源近傍の1観測点の記録のdeconvolutionにより低周波(0.2 2Hz)と高周波(2 10Hz)の震源時間関数を求め,周波数帯によって地震波の励起過程が異なることを見出した。この観測点はbackward位置し,前年度成果にある通り震源過程の詳細を見るのに効果的な観測点であった。 ●2001年芸予地震(M=6.7)の解析 波形インバージョンにより,低周波(0.1 1Hz)を励起する断層面上のすべり量分布を求めた。また,この低周波震源モデルに基づき高周波(2 10Hz)地震波を合成し,観測と比較することにより,低周波と高周波とで,震源での地震波の励起過程がある程度異なることを見出した。また,破壊開始点位置を変えた仮想的なシミュレーションを行い,地表での強震動の分布が,震源の破壊の進行方向によって大きく変わることを確認した。 ●2001年兵庫県北部地震(地殻内地震,M=5.4)をターゲットとした数値シミュレーション 兵庫県北部地震をターゲットとして,震源モデルパラメータを変えつつ,震源過程が強震動にどのような影響を与えるか調べた。この地震の震源断層面の大きさはおよそ4.2km×4.2kmで,前年度のケース(40km×20km)よりずっと小さく,対象周波数帯域が前年度のケースに比べ高周波域にシフトする。しかし,震源過程の不均質性がbackwardでより顕著で,破壊時刻のゆらぎはより高周波帯域で大きいということが,このケースでも成り立つことを確認した。これは,前年度で得られた成果が,地震規模でM5 7クラスの範囲で,周波数にして10秒 10Hzの広い帯域で,という広い範囲で成り立つことを示唆するものである。
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