研究概要 |
本研究では,木星大気や地球中心核内の対流の基本的な性質を調べるために,回転球殻内における熱対流の安定成層への貫入の問題に対して,数値実験と理論的考察で取り組んだ. 前年度に得られた貫入の程度の理論的な見積もりが対流の臨界状態を超えた有限振幅状態でも有効であるかを調べるために,外側が安定成層,内側が不安定成層している回転球殻内の対流の時間発展数値計算を行った.回転角速度と安定成層の強さを様々に変えて十分に対流運動が発達し,運動エネルギーが一定になるまで時間積分した. その結果,安定成層が弱い場合には回転軸方向に伸びたテイラー柱型の対流セルが安定成層に深く貫入し外側境界にまで達するが,安定成層が強くなると貫入が弱くなり下層の不安定成層内にのみ対流運動が集中していく様子が観察された.したがって,テイラー柱型対流運動に関しては,有限振幅状態でも理論的な見積もりが有効であることが示された.しかしながら,対流運動によって引き起こされる平均帯状流成分については理論的な見積もりとは一致しない.粘性の効果のために,平均帯状流成分は安定度を強くしても安定成層を大きくつき抜けてしまう結果が得られた. テイラー柱型対流と比較して,平均帯状流は安定成層をつき抜けやすいという本研究の結果は,木星型惑星表面の帯状流が表面での対流運動に起因しているのでなく,むしろ安定成層の下にトラップされて表面までは到達できない深部の柱状対流によるものかも知れないことを示唆している.深部にて柱状対流により引き起こされた平均帯状流が安定成層を貫いた結果が表面で観測されているのかもしれない.
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