研究概要 |
主マントル衝上断層直下のヒマラヤ変成帯の泥質片麻岩およびフェルシック片麻岩からコーズ石を包有するジルコンを発見した。コーズ石は、ジルコン粒子の外縁部に包有されている。コーズ石を包有するジルコン外縁部のSIMSによるU-Pb年代測定を行って、約46Maの年代値を得た。コーズ石を含む泥質片麻岩およびフェルシック片麻岩は、もともとインド側の上部地殻にあった岩石が、インド亜大陸とユーラシア大陸の衝突に伴ってユーラシアプレート下に沈み込んで形成されたものである。インド亜大陸とユーラシア大陸の衝突の開始は54Ma前後とされているので、上部地殻の岩石は衝突の開始から約800万年かけて、コーズ石が安定になる深度(約90km)まで沈み込んだと見積られる。 コーヒスタン島弧のハンレイ岩について、SEM-EDSによる詳細な観察と定性分析を行ない、ハンレイ岩中にジルコニウム酸化物が含まれていることを発見した。ジルコニウム酸化物は不透明鉱物(ilmentie, magnetite)の粒子境界あるいは析出ラメラに伴って存在していて、この岩石の主要な構成鉱物である輝石および斜長石の内部または粒子境界には存在しない。このような産状から、ジルコニウム酸化物は、ilmentieとmagnetiteが離溶したときに、どちらの結晶構造にも入り難いZrが酸化物として析出したものと考えられる。ジルコニウム酸化物について、予察的にSIMSによるU-Pb年代測定を行なったところ、約51Maの年代値を得た。この年代は、ハンレイ岩類が冷却される過程で、ilmentieとmagnetiteの離溶が起こった時期を記録している可能性が高い。
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