研究概要 |
琉球列島の喜界島には,標高と形成年代の異なる4つの完新世隆起サンゴ礁段丘(I, II, IIIおよびIV面)が発達しており,これらは4回の間欠的な地震隆起のみによって形成されたとする見解と,ユースタティックな海水準変動も関与していたとする見解がある.本研究の目的は,現在のサンゴ礁における礁地形や造礁サンゴの分布と段丘上に保存されている礁地形や造礁サンゴ化石の分布を,定量的に記載して詳細に比較することにより,各段丘形成時の汀線高度を高精度で復元することと,復元された汀線高度とサンゴ化石の放射年代値をもとに島の隆起年代と隆起量をより精密に推定し,各段丘形成へのユースタティックな海水準変動の関与を考察することである. その結果,4つの段丘上の造礁サンゴ化石群集の種構成はほとんど同じで,すべての段丘が現在のサンゴ礁浅海部く特に礁斜面上部)に相当する環境下で形成されたことがわかった.また,現在の礁斜面上部の優占種であるPocillopora verrucosaの被覆率が水深1.5m付近で最も高いことと,段丘上の現地性P. verrucosa化石の被覆率が1面では7.0〜7.5mと8.5〜9.6m, II, IIIおよびIV面ではそれぞれ3.5〜3.8m,2.5〜2.8m,0.4〜1.0mで高いことから,各段丘形成時の汀線高度はI面が8.5〜9.0mと10.8〜11.1m, II, IIIおよびIV面がそれぞれ5.0〜5.3m,4.0〜4.3m,1.9〜2.5mと推定される.さらに,推定された汀線高度,サンゴ化石試料の放射年代値と採取地点の標高を同座標軸上にブロットすると,1.4,3.1,4.1および6.3kaに4回の間欠的な地震隆起に伴う相対的な海面低下が,6.3〜7.0kaにはユースタティックな海水準変動に伴う2〜3mの相対的な海面上昇が起こったことが考えられる.
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