研究概要 |
下部マントル物質として脚光を浴びているMgSiO_3-Al_2O_3系ペロブスカイト固溶体の単結晶合成を、岡山大学固体地球研究センターに設置されている"6-8"分割球型超高圧発生装置を用いて、27GPa・1300℃の超高圧高温下で試みた。合成実験は超高圧高温下での水熱法を用いた。本研究では8%のAl_2O_3成分を含む試料の合成を試み,50μm程度の単結晶が得られた。4軸型X線回折計によりこの単結晶試料の構造評価を行った結果、格子定数a=b=4.8379(4)Å,c=12.9707(13)Å,α=β=90°,γ=120°の三方晶系の物質であり,ペロブスカイトとは異なった結晶であることがわかった。単結晶X線構造解析の結果,この結晶はAlが固溶した含水鉱物phase G (AI-phase G)であることが判明した。これまで,MgO-SiO_2-H_2O系のphase Gの安定領域はこの合成条件(27GPa・1300℃)よりもさらに低温にあるとされてきた。しかし,本研究の高圧実験において,Alが固溶することによってphase Gの安定領域がさらに高温高圧まで拡大することが明らかになった。この結果は下部マントル中での水のリザーバーがA1-phase Gであることを示唆しており,下部マントル中に水が存在する可能性が高いことを示している。さらに,EPMAによる化学分析と結晶化学的考察から,Al-phase Gの含水機構として,Si^<4+>→Al^<3+>+H^+の置換が考えられた。本研究で得られた結果は,現在マントル科学の分野で問題となっている「下部マントル中の水のリザーバーは何か?」という問題に大きな進展をもたらしたと考えられる。
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