研究概要 |
一酸化二窒素(N_2O)は地球温暖化や成層圏オゾンの消長に影響を与える大気中の微量成分であるが、全地球規模での物質収支に占める各発生源、消滅過程の寄与は十分明らかになっていない。本研究は、アイソトポマー(種々の安定同位体を含む分子種)、を指標として、成層圏におけるN_2Oの輸送過程および消滅過程を室内模擬実験および観測によって調べその挙動を明らかにし、対流圏のN_2Oの収支についての情報を引き出すことを目的としている。 今年度は以下の成果が得られた。 1.光酸化反応における分別係数の測定および解析 初年度に製作した、励気酸素原子とN_2Oとの反応および残留N_2Oの回収・精製用真空系を用いて、適切な反応条件を求めた。種々の反応進行度において残留N_2Oのアイソトポマー比を計測し、Rayleighモデルにより解析して、各アイソトポマーの濃縮係数を得た。光酸化反応における濃縮係数は初年度に求めた光分解反応のそれとは異なる特徴をもつことが明らかになった。 2.成層圏におけるN_2Oのアイソトポマー分布の観測および解析 1998年から他研究機関と協力して岩手県三陸で毎年行っている、大気球を用いた大気試料サンプリングを2001年は5月に行った。得られた試料を高感度化した計測システムにより分析し、N_2Oアイソトポマーの鉛直分布を種々時期、緯度について求めた。昨年度までに行った、過去試料やスウェーデン、南極上空で採取された試料の分析結果と比較したところ、各アイソトポマーの分別係数は、高度約23km以下では試料によらずほぼ一定であること、この高度より上では時期(三陸の5〜6月と8〜9月)、緯度によって異なることが明らかになった。 1,2の結果と初年度の結果を踏まえて詳細な解析を現在行っており、学術雑誌への投稿を予定している。
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