研究概要 |
本研究の目的は近年めざましい進歩を遂げたアトミックレイヤーエピタキシーなどの技術を用いて、原子レベルで構造の制御された薄膜を作成し、その表面における光反応を調べることである。そして薄膜内の電子の量子閉じ込め効果が光反応に及ぼす影響を調べ、新奇な現象の発見を目指すことである。 前年度は下地に用いるシリコン基盤を1500Kまで加熱し清浄化した後、30Kの低温に下げて薄膜成長を行うため、クライオスタットに直結して試料に接通電して加熱できる試料ホルダーを作成した。本年度は表面反応の生成種をより多く観測し、生成種の脱離角分布をより広い角度領域で観測できるようにするために、試料の大きさを5mm×20mmから10mm×30mmにし、これを加熱・冷却したときの試料の歪みを抑えるために試料と電極の接触を改良した。また、加熱時以外の外部から試料への熱流入を防ぐために試料への配線を超高真空中で脱着できるようにした。クライオの限界に近い25Kの低温に冷却することができるようになった。反射高速電子回折のディフレクターを改良し、電子線の視斜角・方位角をより広範に変化させることができるようにした。 Si(111)上にAg,Au,Pbを低温で成長させたときの薄膜の形態を観測し、これに酸素分子を吸着させて昇温脱離行った。低温で物理吸着からのピークが観測された。現在紫外線を照射して光脱離・解離の測定を行った。これらにおいて薄膜作成条件によって反応効率の差異が認められた。しかしこれが量子閉じ込め効果であるか、単にステップ・欠陥密度の差によるのか結論は出せない。今後明らかにして行きたい。
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