研究概要 |
準2次元(スリット状)および準1次元(カーボンナノチューブ状)細孔内に拘束された水の相挙動を分子シミュレーションに基づき調べた。細孔壁が疎水性であり、かつ細孔サイズがナノメートル程度である場合、無秩序な水素結合ネットワークをもつ液相と完全な水素結合ネットワークをもつ固相との間の特異な相転移と相平衡が存在する可能性が明らかになった。 1 スリット状細孔内(疎水壁間)の水 壁に平行な方向の圧力テンソルを一定に保ち温度を徐々に下げていくと、液体からほぼ完全な水素結合をもつアモルファス相への相変化が起こることを示した。アモルファス相は二層の水分子からなり、層内では水素結合の6員環のみならず5,7,および8員環が存在し、先に見つかった6員環のみからなる準2次元の結晶相とは異なる構造をもつ。しかし水素結合ネットワークにはほとんど欠陥がなく、拡散係数もバルクの氷と同じ程度であることがわかった。この結果は水のPolyamorphic転移(無秩序相間の相転移)の存在を初めて明確に示したものである。 2 カーボンナノチューブ内部の水 カーボンナノチューブ内部に水を閉じこめ高温相(液体状態)から徐々に温度を下げていくと、低温相は4員環が一次元方向につながった氷(四角アイスナノチューブ)であることがわかった。カーボンナノチューブの直径を調整することにより、低温相が五角形、六角形、および七角形のアイスナノチューブとして存在することも明らかになった。液相と六角および七角形のアイスナノチューブ相の間の相転移は鋭い一次相転移であるが、液相と四角および五角形のアイスナノチューブ相のと間の相変化は温度および圧力を変化させる経路により連続的である場合と一次相転移である場合があることがわかった。等温曲線、自由エネルギー、および構造秩序変数の計算結果から、準1次元系において固液平衡の臨界点が存在する可能性を示した。
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