研究概要 |
立体保護されたホスファキノイド、ホスファチエノキノイド、及びチオキノイド化合物について以下の検討を行った。 2,4,6-トリ-t-ブチルフェニル基により立体保護されたジホスファキノン及びジホスファチエノキノンの一般的な合成法を開発し、3,4-ジブロモジホスファチエノキノンを(Z,Z)-単体一の異性体として合成、単離し、NMR、X線結晶構造解析により、通常のヘテロキノイド化合物と類似した構造を有することを明らかにした。更に、ジホスファチエノキノン、エキソメチレン炭素を^<13>Cラベルしたホスファキノメタン及びホスファチエノキノメタンに対応するアニオンラジカルの構造を、EPRスペクトルにおける、それぞれ2つの^<31>P原子、^<31>P及び^<13>C原子との超微細結合により詳細に検討し、いずれも2段階の酸化還元系であるが、ジホスファチエノキノンがホスファキノンと同様に、低い第一還元電位、大きな第一及び第二還元電位の差を有し、一方のリン原子上に不対電子が局在化したアニオンラジカルを与えるのに対し、ホスファキノメタン及びホスファチエノキノメタンが高い第一還元電位を有する一方で小さな還元電位差を有し、不対電子がπ共役系全体に非局在化したアニオンラジカルを与えることを明らかにした。すなわち、ホスファキノイド及びホスファチエノキノイド化合物は通常の低周期元素の場合と同様のキノイド及びヘテロキノイド構造を有するが、酸化還元的性質に関しては2通りの場合があることが分かった。 チオキノイド化合物に関しては単離には至らなかったが、立体保護されたチオフェノール骨格である3,5-ビス(2,4,6-トリイソプロピルフェニル)-4-メルカプトフェニル基を有する一連のπ共役系骨格の構築法を確立し、対応するチオベンゾキノメタン、チオ及びジチオビフェノキノン、チオガルビノキシル等の前駆体を合成し、その反応性を検討した。
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