研究概要 |
タンパク質に見られる2次構造の1つ、3_<10>ヘリックスはαヘリックスより短い周期を持つらせん構造である。3_<10>ヘリックスは3残基で1回転し、i+2番目のアミノ酸残基と水素結合を、またαヘリックスは3.6残基で1回転しi+3番目のアミノ酸残基と水素結合をしている。 本年度は昨年度に引き続き、3_<10>ヘリックスを形成するペプチドの探索と溶液構造研究、及び実際の酵素中の機能性部位配列について合成を行った。 金属酵素中の3_<10>ヘリックス部位配列として、Boc-Aib-Aib-Cys-Ala-Pro-His-Aib-Aib-OEtの合成を試みた。Aib残基は結晶性と溶解性の向上を目的としている。その結果、-His-Aib-結合の合成が非常に困難であるとわかった。これは立体障害に起因するためであり、-His-Ala-に配列をかえることで解決した。 昨年度はオキシ酸の1種類である乳酸(Lac)残基を用いることで3_<10>ヘリックスを発生させることに成功した。今年度はα-ヒドロキシイソ酪酸(Hib)を用いてヘリックス形成能を研究した。HibはLac残基のα位の水素原子をメチル基に置換した構造を持つ。このα,α'-ジメチル構造はα-アミノイソ酪酸(Aib)にみられるように、側鎖メチル基の立体障害によって一般的に3_<10>ヘリックス形成すると考えられている。そこでBoc-(Leu-Leu-Hib)_n-OEt(Boc=t-butoxycarbonyl, n=2-5)を合成した。その結果Boc-(Leu-Leu-Lac)_5-OEtではαヘリックスを取るのに対し、Boc-(Leu-Leu-Hib)_5-OEtではアンオーダーになることがCDスペクトルより明らかとなった。これは従来の推定に反し、α,α'-ジメチル構造そのものでは規則構造を壊すことを示している。
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