研究概要 |
電子相関による多体効果の一つとして電荷整列と呼ばれる電荷局在化現象が注目されている。この現象では電荷の空間分布が転移の秩序パラメータに該当するため,局在化の機構を理解するには電荷の実空間分布を明らかにすることが重要である。 本研究では,分子の電荷状態の変化を鋭敏に反映するラマンスペクトルによって,ET塩に発生した電荷整列の様子を明らかにする手法について検討している。前年の研究では,2種類存在するET分子のC=C伸縮モードのうちv3と呼ばれるモードは電荷配列の対称性を反映し,もう一方のv2と呼ばれるモードは分子の価数のプローブとして用いることができることを明らかにした。 本年度は,前年度用いた系とはET分子の平均価数が異なる(ET)_3CuBr_4塩のラマン測定行い,v2がやはり価数を正しく反映した波数シフトを見せることを確認することで,前年度に提案した電荷分布の決定指針の妥当性を示し,さらに,常状態から局在化状態へ至る過程での電荷分布の変遷について検討するため,高圧ラマンスペクトル測定を開始した。
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