研究概要 |
○単一の雌雄の生殖系列細胞を用いたmtDNAのコピー数の測定 mtDNAの遺伝様式において、これまで仮説とされてきたボトルネック効果(生殖細胞形成過程の一時期にmtDNA分子数が極端に低下する現象)について詳細な解析を行った。様々な発生段階の単一細胞におけるmtDNA分子数を測定した結果、卵核胞期胚(4.6×10^5)、未受精卵(4.8×10^5)、前核期胚(5.0×10^5)、2細胞期胚(2.24×10^5)、4細胞期胚(1.4×10^5)、8細胞期胚(7.1×10^4)、胚盤胞期胚の内部細胞塊(3.8×10^3)、PGC(8.5d:2.4×10^3,10.5d:2.8×10^2,11.5d:2.3×10^2,12.5d:3.2×10^2,13.5d:3.9×10^2)であった。体細胞では10^3分子と考えられているのに対して、初期胚では10^4〜10^5分子であったものの、始原生殖細胞(10.5-13.5d)では10^2分子まで減少しており、PGCのの11.5dの段階で極小となった。これまで、mtDNAのボトルネック効果は、胚盤胞期に起こるとも考えられてきたが、この可能性については本実験から否定され、PGCの移動期に起こることが明らかとなった。また、その際のコピー数は200コピー程度であり、子孫への伝達される時の分配の単位になると考えられる。本研究の結果は、mtDNAの遺伝様式の特徴について明らかにしたばかりでなく、mtDNAの突然変異によるミトコンドリア病の遺伝解析に応用が期待できる。
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