研究概要 |
将来予測される大気中の二酸化炭素濃度増加に対する作物の光合成反応に関しては、膨大な研究が行われている.しかし,光合成を律速する重要な要因である,葉内の二酸化炭素拡散については,測定が困難なこともあって,ほとんど研究がすすんでいない.本研究では,葉の内部の二酸化炭素拡散抵抗が異なる作物を環境制御した温室内で栽培し、高二酸化炭素濃度下(70Pa)と通常の二酸化炭素濃度下(35Pa)での光合成反応及び葉の形態変化を種間比較した。さらに,葉の内部構造と二酸化炭素拡散抵抗との関連について,詳細な検討を行った。その結果,次のような成果が得られた. ◆それぞれの植物を生育させた二酸化炭素濃度の下で測定した場合、全ての種において、光合成速度は70Paで増加した。 ◆多くの種で,葉内拡散抵抗は70Paでは減少する傾向があった. ◆葉内拡散抵抗に影響する内部構造上の要因は複数存在し,植物が環境に応答する際に,葉内拡散抵抗の変化を互いにうち消しあう方向に変化する場合があることが示唆された. 以上の結果から、高二酸化炭素条件下では,葉内の拡散抵抗は光合成速度を減少させる方向に変化すること,しかしその影響は光合成速度に関与するその他の要因によってうち消されていることが示唆された.また,高二酸化炭素濃度下では,葉面積など葉の形態反応に種間差があることが知られているが,この形態変化は種々の内部構造に関わる要因を通じて,葉内拡散抵抗や光合成速度に大きな影響を与える可能性があることが示唆された.
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