研究概要 |
【背景】魚類におけるカルシトニン(CT)の生理作用は不明な点が多い。そこでその作用を解明する為、レセプターに注目した。また、リガンドであるCTもクローニングし、その発現をレセプターと比較した。さらに、同一の遺伝子から生じるカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)についても解析し、CT特有の作用を調べた。 【研究実績】 1)ヒラメCT及びCGRPの塩基配列を決定し、その発現を調べた。その結果、CGRPは脊椎動物を通じて73-81%の相同性を示したが、CTは哺乳類との相同性は低く、哺乳類とは異なった作用がある事が示唆された(Suzuki et al., PePtides, 2001)。一方、CGRPは脳、心臓、腸、生殖巣で発現し、CTはそれ以外に肝臓に検出された。今後、これらの器官における作用を詳細に調べていく予定である。 2)初期発生におけるレセプター及びリガンドの発現をRT-PCR法により調べた。その結果、受精直後からレセプター及びCTの発現がみられ、96時間後にこれらの発現が急激に上昇した(平成13年度日本動物学会発表)。CGRPもこの時期に発現が上昇している事から、96時間後の形態形成にこれらのホルモンが重要な役割を果たしている事がわかった。 3)海水から淡水移行に伴うCT及びCGRPレセプターの発現をエラで調べた。その結果、CGRPレセプターの発現は淡水移行に伴い減少した(Suzuki et al., Fisheries Sci.2002)。しかしながら、CTレセプターの発現は変化せず、浸透圧以外の調節に働いている事が示唆された。 4)生殖期に血中CTレベルが上昇する事から、性ホルモンとCTとの関係を調べた。その結果、エストロゲン投与により血中CTレベルが上昇した。さらにCTの分泌器官である鰓後腺にエストロゲンレセプターが検出され(投稿準備中)、生殖期におけるCTの重要性が示された。
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