本研究では、見かけ上一括した制御を受けているように見える進化起源の異なる遺伝子(蛇毒神経毒Etx及びPLA2IA)と、進化起源が同じだが異なる組織で発現している遺伝子(蛇毒神経毒PLA2IAと膵臓消化酵素PLA2IB)の遺伝子発現機構の共通性、あるいは相違を塩基配列および調節機能の解析から比較することにより、遺伝子を発現させる機構の進化(獲得)について解明することを目的とした。 12年度の結果をふまえ、in vivo転写assayを行う為のvectorを構築した。これら構築vectorを用いて遺伝子直接注入法によるin vivo転写assayを試験的に行ったが転写活性を検出できなかった。このため蛇毒遺伝子の転写assayに用いられた実績のある細胞株を代替細胞として用い、転写assayを行った。この結果を進化起源の異なる遺伝子間(EtxおよびPLA2IA)で比較すると、遺伝子近傍の領域では同様の傾向を示したが、さらに上流域まで含めた解析を行うとEtx特異的な転写の活性化がみられ、異なる傾向を示した。現在進化起源が同じ遺伝子間(PLA2IA及びPLA2IB)での転写assayを行っている。この両遺伝子については昨年までの研究により遺伝子近傍の保存配列中にPLA2IA特有の挿入配列が見いだされている。両者の転写活性の比較によりこの挿入配列の機能的意義を明らかにできると考えている。 EtxとPLA2IAに関してDNaseI hyper sensitive siteの検索を毒腺及び膵臓について行ったがDnase Iに感受性のサイトは検出されなかった。
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