研究課題/領域番号 |
12740481
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研究種目 |
奨励研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
人類学(含生理人類学)
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研究機関 | 独立行政法人国立科学博物館 (2001) 国立科学博物館 (2000) |
研究代表者 |
海部 陽介 独立行政法人国立科学博物館, 人類研究部, 研究官 (20280521)
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研究期間 (年度) |
2000 – 2001
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研究課題ステータス |
完了 (2001年度)
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配分額 *注記 |
1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
2001年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2000年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
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キーワード | 歯列 / 咬合 / 咬耗 / 日本人 / 人類学 / 歯学 |
研究概要 |
東京大学総合研究博物館所蔵の、縄文・古墳・鎌倉・江戸時代人骨について、以下の作業を行った。まず歯列の保存状態と各種歯科疾患の罹患状態について、一定の基準を満たす標本を分析対象資料として選定した。次に、これらの資料において歯列の復元の歪みを確認し、あるものについては、アセトンを用いて歯列を一度解体した上で復元を修正した。こうして選択した標本群について、個体の年齢、前歯咬合形式、咬耗度、咬合面傾斜角について一連のデータを採取した。これらのデータを昨年度に収集した、他の日本の古人骨資料のデータと合わせて、各変数間の関連性を探る統計解析を行った。解析はなお進行中であるが、予備的な解析結果としては、当初の予想通り、前歯部咬合形式と咬合面傾斜角の時代変化が連動する傾向が示された。さらに、ドイツのゼンケンベルグ自然史研究所が所蔵するジャワ原人の化石標本について、同様のデータを採取し検討したが、ジャワ原人では縄文時代人と同じく、前歯部の咬耗の激しさと大臼歯咬合平面の平坦さを併せ持つ傾向があり、文献から知れる他の化石人骨の状態を考慮すると、これが先史時代人に一般的な歯列形態であったことがうかがわれる。さらに、研究の過程で新たな可能性として浮かび上がってきたのは、上顎前歯のLSAMAT(lingual surface attrition of the maxillary anterior teeth)と呼ばれる特殊な磨耗の成因についてである。南米の古人骨資料などで報告のあるこの磨耗は、咀嚼運動とは無関係な特別な行動の結果と解釈されることが多い。本研究の過程で、これと似た咬耗が、日本の鎌倉時代人に頻繁に認められた。本研究が示しつつある知見に沿って考えれば、LSAMATは前歯の咬耗が減少し、人類の前歯部咬合形式が変化した過渡期に必然的に現れた現象で、特別な行動を示すものではないことが示唆される。
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