研究概要 |
本研究ではシンクロトロン放射光を用いた光電子回折(PED)によって、原子や有機分子の吸着したシリコン(Si)表面の構造解析を行った。 これまでの研究によって、Si(001)-2x1表面上にアンチモン原子が1原子層(ML : monolayer)吸着した表面は1x2周期であり、その構造もダイマーを形成していることが知られている。しかしSi2p内殻準位シフトの成分がどの表面Si原子に帰因しているかは、理論、実験で見解が異なっていた。そこで、Si2p内殻準位シフトを分解したPEDを行った結果、主な内殻準位シフトの成分がアンチモンと直接結合したSi原子に帰属されることが明らかになった。この結果はSurf.Sci.誌に掲載された。 Si(001)表面上に室温でエチレン分子を吸着させるとおよそ0.5MLで擬飽和状態になり、その後徐々に被覆率が増加し、最終的に1MLで飽和すると言われている。そこで、PEDによって詳細な構造解析を行ったところ、擬飽和状態では、Siダイマー列内の近接位置にはエチレンが吸着していないことが分かった。すなわち2x2やc(4x2)といった吸着構造が予想され、最近の走査トンネル顕微鏡による研究結果と良く一致した。この結果はSurf.Sci.誌に受理されており、印刷中である。 Si(001)表面上に室温でベンゼン分子を飽和吸着させた場合の構造については、複数のモデルが提案されているが、回折等による詳細な構造解析は報告されていない。そこで本研究によってPEDによる解析を行った。その結果、室温ではシクロヘキサジエンに類似する構造が支配的であることが分かった。この結果は日本物理学会講演会および応用物理学会講演会等で発表を行った。また現在、学術誌への投稿準備中である。 PEDを用いて1,4-シクロヘキサジエン吸着Si(001)表面の構造に関する実験を行った。現在、そのデータの解析中であり、まとまり次第、学術誌への投稿を予定している。
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