研究概要 |
本研究は,圧電効果によって生じる圧電場を利用し,圧電結晶表面近傍の媒質を調べる顕微鏡の開発である.具体的には,弾性表面波(以下SH-SAW)伝搬に伴って発生する圧電ポテンシャルをプローブとし,伝搬面表面と接する媒質(特に液体)の情報を検出すること目的としている.液体中に含まれる情報を検出する手法として,自己較正型レシオメトリック法を考案した.これは,1つの過渡応答波形の立上り・立下り間の時間差を2つ取り出し,その比をとる方法である.この結果,実験環境に依存した情報を低減することができ,液体の情報のみを効果的に摘出することが可能となった.次に,システムの大幅な改良を行った.従来では1回の測定に50分かかる.そこで,複素誘電率に対して高感度な30MHZのSH-SAWセンサを利用し,流量を変えて測定した.また,フローセルの配置についても検討した.その結果,従来とは逆さまにした配置により,溶液内に含まれるイオンの情報が波形に表れることが分かった.例えば,市販のミネラルウォータの場合,ボトルの上側には1価のイオンが,また底部には2価のイオン多くあり,ボトル内で均一に分散していないことが判明した.このような現象は,センサ表面に局在したエバネッセント場である圧電場を用いることによりはじめて観測された. 以上のように,本研究により,圧電場を用いたニアフィールド顕微鏡の有効性が確認された.今後は,本システムの実用化を目指した研究を行う.
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