ピルボックス型光変調器は、固有モードがウィスパリングギャラリーモードの薄い円盤形コアをもつ光共振器に変調電極を装荷した構造をしている。数値計算において、コア内の周回光と結合導波路の伝搬光がモード結合する際の位相関係を同相にするように1GHz程度の周波数の変調信号を与えることで、CW光入力から振幅増大変調によるパルス生成が行えることを示した。本研究の目的は、実際にデバイスを作製し、コア円周部の作製精度が特性に及ぼす影響を評価することである。 昨年度構築したレーザビーム直接描画装置は、サブミクロンの線幅でのパターニングが可能である。この装置はPCによる制御であるので、PCに入力するパターンデータを変更するだけで任意形状のパターンをフォトマスクなしで形成することができる。光変調器の作製には電極装荷のための2回目のパターニングが必要であるが、レーザビームによる描画はマスクレスのため、パターンの位置合わせ機構を追加しなければならない。今年度これを行った。赤色レーザ光による位置検出機構を組み込むことで、角度にして0.1mrad以下、位置にして約1μmの精度での位置合わせが行えた。 一方で、光学特性評価のための評価系の構築を行った。振幅増大変調は共振波長に対して発現するため、波長可変光源であるチタンサファイアレーザを光源に用いることにした。今年度系の構築は完了し、予備実験としてチャネル導波路への入射や出射端面の近視野像の観察に成功した。 導波層形成はLiNbO_3基板に対しピロリン酸プロトン交換により行う。この際ピロリン酸により腐食されないTaでマスクを形成するが、TaのエッチングはRIEによるドライエッチングが必要となる。我々はRIE装置を所有しないため外部機関に依頼して実施している。条件出しに時間を要したためデバイスの作製に関して約半年ほどの遅延が生じた。
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