研究概要 |
本年度は以下の研究を実施し,本研究の目的を達成した。 1.短絡故障過程の数値シミュレーション手法の開発 短絡故障は,配線-配線間絶縁物の界面はく離,それに続く絶縁物の破壊を伴ったヒロックの成長,結合により生じる。本シミュレーション手法の開発にあたっては,故障過程の第1段階である配線-絶縁物間の界面はく離の時点を短絡故障と定義した。絶縁膜で被覆された多結晶配線における配線-絶縁物間の界面はく離の数値シミュレーション手法を,エレクトロマイグレーション損傷の支配パラメータを用いて開発した。この手法は,配線内部応力分布の経時変化をシミュレートすると共に応力と配線-絶縁物間の界面強度との対応を考慮して,ヒロック形成による絶縁物のはく離に至るまでの時間およびはく離箇所を予測することにより,短絡故障強度の評価を行うものである。また,このシミュレーションを加速通電試験に適用することにより,配線-絶縁物間の界面強度を反映した物性値を導出する方法についても開発した。さらに以上の研究の成功を踏まえ,配線-絶縁物間の界面はく離までのシミュレーション手法をその後に起こるボイドの形成・成長による断線過程のシミュレーションにまで拡張し,絶縁膜で被覆された多結晶配線の断線故障に対する強度評価法についても開発を行った。 2.本評価法の実験検証 厚さの異なる絶縁膜を表面に有するアルミ多結晶配線を対象として,配線が断線に至るまで通電実験を行った。絶縁物のはく離に達するまでの時間(潜伏期間)と断線時間および断線箇所に関する実験結果を本法に基づいた評価結果と比較したところ,潜伏期間および配線寿命さらに断線箇所のいずれにおいても良好な一致を示し,本強度評価法の有効性を検証した。
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