研究概要 |
プラズマ溶射しゃ熱コーティングに関する研究における,問題点のブレークスルーを目指した.具体的には・プラズマ溶射しゃ熱コーティングの熱サイクル損傷および損傷評価パラメータの定義付け・熱サイクル損傷の定量化および損傷挙動の詳細な検討・実機の作動条件を模擬した長時間高温保持熱サイクル試験方法の構築および実施・しゃ熱特性の時間依存的変化メカニズムの解明という基本方針に基づき,従来の2層構造しゃ熱コーティングにおける諸特性の検討および傾斜組成化による有効性に関する考察を行った. その結果,(1)真空雰囲気中長時間高温保持(最高加熱温度1000℃)熱サイクル付与において,傾斜組成コーティングの熱サイクル損傷は2層構造コーティングより軽微であり,傾斜層による熱応力緩和機能が有効に作用した,(2)大気雰囲気中長時間高温保持(最高加熱温度1000℃)熱サイクル付与において,傾斜組成コーティングの熱サイクル損傷は真空雰囲気中の場合と一変して顕著であったのに対して,2層構造コーティングの熱サイクル損傷は真空雰囲気中の場合と大差がなく,軽微であった,(3)2層構造コーティングと傾斜組成コーティングの大気雰囲気中長時間高温保持熱サイクル付与による熱サイクル損傷特性の劣化挙動は,Al_2O_3層のような酸化防止層の形成の有無およびそれに起因する傾斜層の酸化に依存する,(4)真空雰囲気短時間高温保持熱サイクル付与においてしゃ熱特性の劣化は認められなかったのに対して,大気雰囲気長時間高温保持中熱サイクル付与において熱伝導率は上昇し,しゃ熱特性の劣化が見られた,(5)プラズマ溶射しゃ熱コーティングで一般的に用いられているZrO_2、トッブコートは,大気雰囲気中長時間高温保持熱サイクル付与による焼結の進行により気孔率の低下(緻密化)を生じる.この現象は真空中では観察されず,酸素の存在が焼結の進行を促進しているものと推察される,といった知見を得た.
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