研究概要 |
本研究は微細放電加工において工具電極材料を工作物上に付着させ,微細な3次元形状を造形する新しい加工法の開発を目的としている.鋼などの実用金属の付着や異種金属の接合が可能なことから,本加工法は微小機械部品やマイクロセンサなどの直接造形に利用できると考えられる.初年度は任意の形状を造形する技術の開発を行い,平面上に均一な厚さで曲線を描いたり,斜め上方へ所望の角度で付着物を成長させることが可能になった.しかし,工具電極を走査して面を塗りつぶしたり線を積層させた場合には,付着物同志の密着性が良好でなく内部に空洞が残存する場合があることがわかり,本方法の実用化を考える上での課題となった. 本年度は柱状に造形した試片に対して曲げ試験を行い,強度などの機械的特性を評価した.その結果,付着物の構造が緻密な湯合は母材と同程度の強度が得られるが,付着物の表面あるいは内部に空洞状の欠陥が存在する場合はそこに応力が集中するため付着物の強度が低下することがわかった.この空洞状の欠陥の発生は付着物の放電点近傍の温度と密接に関係していると考えられることから,付着造形物の品質を改善するための加工条件を温度の観点から検討した.まず,放電電流値を変化させて得られた付着物の表面と内部の状態を観察した結果,放電電流が大きい場合は内部に欠陥は発生しないが表面の状態が悪く,反対に放電電流値が小さい場合は表面の状態は良好だが内部に欠陥が多く発生することがわかった.そして,放電電流値が小さい場合に放電頻度を高くすると表面にも内部にも空洞状の欠陥が発生せず,付着物の品質が改善されることがわかった.この結果はまた,初年度に課題として残った付着物同志の密着性の問題に対しても有効な対策を示唆していると思われる.
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