研究概要 |
YAGレーザにより金型を用いないでプラスチックを所望の形状に成形する加工法について検討し,以下のような所見が得られた. 1.アクリル樹脂,ポリカーボネートおよび高密度ポリエチレンの3種のプラスチックでは,熱膨張係数の最も大きい高密度ポリエチレンが最大の変形量を示した. 2.曲げの進行は,レーザ光照射終了後の冷却過程において急激に起こる. 3.曲げ角は,試料上でのエネルギー密度がある一定値で最大となる. 4.同等のエネルギー密度であっても,送り速度によって変形形態が異なる.送り速度が大きいときよりも小さいときのほうが安定して加工が進行する.そのため精密な変形のコントロールを行うには,送り速度を適切な値に設定してレーザ出力の小さい条件で加工を行うことが望ましい. 5.レーザ光照射条件を適正に設定することにより,厚さの異なる試料に対しても90°まで変形させることが可能である. 6.試料厚さの増大にともない,最大曲げ角が得られる最適レーザ出力も増加する. 7.試料厚さが小さい場合,レーザ光走査中に照射開始側から変形が進行する.一方,試料が厚い場合には,照射終了時に一斉に変形する. 8.試料にレーザ光が照射されるにしたがって,照射部における試料表面の押し込み硬さは増大する.これにより試料が薄い場合には変形が安定し,走査1回あたりの変形量が増大する. 9.変形時に発生する力はレーザ光走査回数には関係なく,ほぼ一定である. 10.スポット照射で照射時間を制御することにより,レーザ光照射側の試料表面に高さ数十〜数百μmの突起を作製可能である. 11.プラスチックにおいては吸収体を塗布した面でレーザ光が吸収されることで熱が発生することから,一方向からのレーザ光照射で上下に曲がる方向を制御できる. 12.吸収体の塗布やレーザ光の走査方法を工夫することによって様々な形状の創成が可能である.
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