研究概要 |
本研究は、液体窒素を作動流体とした極低温流体圧送用小型高速遠心ポンプの定常特性、キャビテーション特性、及びポンプ始動時の動特性を測定することによって、極低温流体特有のポンプのキャビテーション特性を解明することを意図して計画されたものである。 前年度行われた液体窒素を対象とした予備実験に引き続き、本年度は、極低温流体圧送ポンプの定常特性、キャビテーション特性、及びポンプ始動時の動特性の測定が行われた。その結果、極低温流体圧送用に開発された供試小型高速遠心ポンプの吸込比速度Sは、S=2016[rpm, m^3/min, m]と、標準的な遠心ポンプに比べ大きく、本極低温流体圧送用ポンプのキャビテーション特性が優れていることがわかった。また、高流量域においては、キャビテーションに伴う全揚程の降下が非常に小さいのに対して、低流量域においては、吐出し流量の急激な変動に伴った大きな揚程降下が発生することが確認された。本供試ポンプは、キャビテーション非発生時において、いわゆる右上がり特性を持っていないため、キャビテーション発生時におけるこの低流量域の全揚程の急激な降下の原因として、低流量域におけるポンプ羽根車入口近傍の逆流と羽根車に発生するキャビテーションが相互に干渉して発生する現象ではないかと考えられるが、ポンプ羽根車内の圧力測定の困難さのため、その解明には至っていない。一方、キャビテーション発生時のポンプ始動時における動特性は、キャビテーション係数が小さいほど、また、ポンプ始動時間が短いほど、ポンプ過渡運転期間中のポンプ作動点軌跡が、準定常変化である抵抗曲線から逸脱することが明らかにされた。今後、本研究で確認されたキャビテーション発生時の低流量域における全揚程降下の原因を解明するとともに、ポンプ内の可視化を行い、キャビテーションの挙動とキャビテーション特性の関係を明らかにする必要がある。
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