研究概要 |
多孔質試料として,ガラス材の磁化率を水の磁化率と適合させて磁場のひずみを最小限に抑えたガラスビーズ充てん層と,水を注入した球状カプセルを多数充てんしたカプセル充てん層を用い,磁気共鳴イメージング(MRI)装置により流速・温度および局所伝熱量の計測を行った. これまでの研究より、水を注入した球状カプセル内部の水の相変化速度から,流体と球状カプセル間での局所熱流束値の定量計測が確立された.この計測法を約1000個のカプセルをランダムに充填させた模擬的な氷蓄熱槽内の伝熱計測に適用し,次のような結果を得た.融解実験より得られた熱流束の等数値面は空間的に不均一であり,その不均一な形状は流速が変化しても大きく変化しなかった.一方,凍結実験で得られた熱流束の等数値面は空間的により強い不均一性を示した.この原因は,過冷却解除が偶発的に発生するためにカプセル毎に凍結開始時間が異なり,このような偶発性が熱流束分布の不均一性を強くしたことが明らかになった.また,計測された流速分布と熱流束分布の比較から,壁面付近の高熱流束領域では高流束領域であり,逆に中央付近での低熱流束領域での流速は低く,熱流束の不均一性は冷媒の不均一流れによることが明らかになった. 充てん層内の空隙幾何形状は非常に複雑な形状をしており,しかも隣接する空隙同士が多数結合して流路としてのネットワークを構築している.そこで,ガラスビーズ充てん層内の三次元的な空隙幾何形状をMRIにより計測し,それを元に流動モデルの構築を行った.その手法では,複雑な空隙幾何形状を最小の空隙単位に分割して単純化し,空隙構造はそれらが結合した管路網であると見なして低Re数域での流動モデルの構築した.さらに,MRIによる充てん層内流れの三次元的な計測を行い,それとモデルから得られた結果を比較することにより,次のような成果を得た.空隙形状の特性として,壁面近くにある五面体は大きな体積を持つが,内部にある四面体の体積は小さく,その幅は非常に狭かった.また,開発した流動モデルは壁面チャンネル流などの空隙構造に依存した不均一流れを定性的に再現することができることが分かった.
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