研究概要 |
超音波照射によって液体中に誘起される流れのメカニズムを明らかにするために,シュリーレン法と音響化学発光による音場の可視化実験,高速ビデオ,レーザードップラー流速計(LDV),超音波流速計(UVP)を用いた速度計測を実施した. まず,周波数40kHZ,最大出力400Wの投げ込み式超音波洗浄器を利用して水槽内に定在波音場を形成させ液中に発生する流れを調べた.定在波音場では,(1)音圧の節を中心として,1/3波長スケールの上下1対の"お椀"型の音響キャビテーションの気泡雲(クラウド・キャビテーション)が存在し,(2)このクラウド全体は数cm/s〜6cm/sで音場中を準周期的に移動する.さらに,(3)このクラウド内部の気泡自身は数m/s〜6m/sの速度で運動する2重構造を有する音響キャビテーション流れが発生することを明らかにした. 超音波は液体中で瞬時に定在波を形成するが,立体的な拡がりをもった水槽内で振動面の大きさが水槽内の大きさと比べて極端に小さい場合は,定在波としての性質が薄れ進行波としての性質が現れる.次に,周波数61kHz,最大出力20Wの小型のホーン型振動子を用いてホーン先端から発生する流れについて詳細に調べた.(4)ホーン先端には円錐状のクラウド・キャビテーションが観察され,(5)ホーン先端からは速度一定のポテンシャル・コア領域、それ以降では距離の逆数に比例して減速していく速度0.1〜0.8m/sの音響キャビテーション噴流が発生する。さらに,(6)この噴流が熱伝達率を飛躍的に増加させることを確認した. 音響キャビテーション流れや音響キャビテーション噴流の発生は,従来の超音波音響流とは全く独立して存在する.これらの流れは音響キャビテーションが音響放射力を受けて音場中を移動することにによって引き起こされる.
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