研究概要 |
昨年度は,提案する多点応答オーダートラッキング手法を適用するのに必要な信号成分の周波数同定,通過帯域の設定,センサー配置について調べた.本年度は,表記の研究課題について,オーバーハング形のロータを用いた検証実験を行った. 理論面では,提案する推定手法を実現するため,多点で取得した実稼働時応答をボルド・カルマンフィルタの構造方程式から得られる離散時間系の状態空間モデルで表し,タコ信号をもとに構成された信号部分空間の基底上に射影する定式化について,MATLABコードとして実現した.本コードを数値的に作成された多点応答データに適用し,その精度を確認した.これにより,昨年度求めた周波数同定法から推定したタコ信号をもとに各計測点における各周波数成分の振幅を推定できることを示した. 実験面では,実験装置のロータにおいて,回転数を急激に上昇させ,その際のロータ各部の変位を同時計測したデータに対して本手法を適用した.その結果,単点参照を基礎とするボルド・カルマンフィルタを用いる場合に比べて,はるかに少ない計算量で多点応答のオーダートラッキングが可能であり,振幅推定精度もほぼ同等であることが示された.但し,例えば任意の次数の共振周波数と回転の周波数がクロスする部分では,信号部分空間の基底ベクトルで構成される行列が悪条件となり,射影の精度が悪くなることが判明した.現在,この点を改良するため,基底ベクトルを構成するタコ信号の長さ,サンプリング間隔などの最適値を求める手法の定式化および実験データによる確認を行っている.
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