研究概要 |
本研究は,可変速可変ピッチ風力発電機に対して,風況に応じてピッチ角を能動的に変化させることにより,常に風車出力が最大となるように制御し,風からのエネルギー獲得の高効率化を試みるものである。本年度は,実機に対して制御実験を行った。また,得られた成果の一部をThe 1st IEEE International Conference on Information Technology in Mechatronicsにて公表した。 発電機で発電された発電量を測定し,適応極値制御手法を適用して定格風速以下では風車出力(電力)を最大化し,定格風速以上では風車出力(電力)を定格値に維持する制御系を構成した。風洞装置の性能と実験機の強度の問題から,実験を行う風速を13.0[m/s]とし,出力最適化制御に先立って,この風速下でピッチ角度を2.5[度]ずつ変化させ,それぞれの角度での発電量を測定した。その結果,ピッチ角42.5[度]付近で発電される電力が最大となることが確認された。風速13.0[m/s]の下で,ピッチ角の初期値を35[度]として制御実験を行った結果,最終的にピッチ角は42.5[度]付近に収束した。これにより,この風速下においてピッチ角の挙動誤差±2.5[度]に対して,5.8%発電効率が改善される。 実験結果から,構成した制御系の有効性を確認することができた。しかし,風車出力(電力)が収束するまでの整定時問がかなり長くかかってしまった。この理由としては,ピッチ角を変えてから発電される電力値が変わるまでの反応時間が比較的ゆっくりしていることが挙げられ,本制御手法における極値探索の性質上,風速の測定を必要としない替わりに,収束時間がある程度長くなるのは避けられないであろう。今後は収束時間を短縮するため,発電機に昇圧チョッパ回路による電圧制御回路を介してバッテリーを接続し,ピッチ角を変化させる替わりに,より電力への応答が速い電圧制御回路の電圧を変化させ同様の制御実験を続けていく。
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