研究概要 |
本研究は,深海探査テザードシステムの基本的な動特性を,理論的,実験的検討から明らかにすると共に,探査機の制御に関する評価をまとめ,これにより,実システムの実現に向けた指針を提示することを目的としている。 本研究では,ケーブルを弦、探査機を2自由度剛体系として取り扱いモデリング、定式化を行った。この理論解析では,大変形,大変位を伴う弦とその先端に拘束された先端剛体系との相互作用をマルチボディダイナミクスの観点からA.N.C法を用いて捉えている。一方,弦上端の平面内並進運動,弦の伸展回収機構,水槽を備えた実験装置を完成させ,大変位,大変形を伴う弦と剛体系との連成運動に対して観察を行った。これにより前述のモデリングならびに定式化の妥当性を確認した。また,弦・2剛体系の無重力下における運動メカニズムを数値計算結果より物理的に解明した。 次に,先端剛体の姿勢制御の実現を検討するため,先端剛体に取り付けたリアクションホイールおよび剛体間の関節トルクを併用した制御系について検討した。まず,このような制御下における動的応答の特性を検討するために,制御ゲインを考慮に入れた固有値解析,自由振動,上端変位加振による強制振動について数値シミュレーションを行った。これより,制御ゲインに対する固有値の変化により系の振動モードなどに対する知見を得た。さらに,定常応答について検討し,系の非線形性と制御ゲインとの関係により,制御ゲインに対する定常振幅に特徴的な変化が見られることを明らかにした。 今期は,流体作用下および伸展回収時の検討結果を成果としてまとめるには至らなかったが,重力場での運動解析とこれに対応する実験,制御効果の確認、また微小重力下での運動解析を行うことにより,弦・剛体系の運動解析手法の確立と運動メカニズムの解明,本システムにおける姿勢制御の実現に対する指針の取得などを成果として得ることができた。
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