研究概要 |
従来,パターン認識においては単一の属性の判別が扱われてきた.しかし,現実の課題は,顔画像からの表情判別と個人判別のように複数の属性を扱う必要がある.このような課題を従来の方法で扱うなら,表情判別と個人判別を独立に行うか,表情と個人の組を一つの属性とみなして判別を行うか,ということになる.しかし,前者では個人ごとの表情の差異への対応が難しく,後者では組み合わせの数が大きくなるためサンプルの確保が難しい.そこで,このような複数の属性を持つデータを扱うことのできるモデルを構築した. (a)顔画像認識で広く使われている線形判別分析に環境変化への適応能力を付加するオンライン線形判別分析アルゴリズムの開発・改良を行なった.応用として,本アルゴリズムを実時間顔画像判別システムに組み込んだ. (b)顔画像のように高次元のデータを扱うためには,有用な成分をできるだけ保存しつつ低次元の特徴量に変換することが必須となる.そこで,圧縮後のデータの分布が属性ごとにできるだけ異なるよう,という観点から,Kullback-Leibler情報量に基づいて変換を決定する手法を提案した. (c)複数属性を持つ高次元データに対し,各属性をそれぞれ低次元ベクトルで表現するモデルを,ニューラルネットで構築した.これを複数人物・複数表情の顔画像に適用し,人物・表情の全組み合わせが与えられていなくても,与えられた顔画像から欠けた組み合わせの顔画像を推定し,判別を行うことができた. (d)個人や表情のラベルがつけられていない顔画像だけを与えられて,個人別・表情別という複数の観点での分類を行うという,教師なし課題にも着手し,低次元の基本的な例題に対しての実験で分類に成功した.
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