研究概要 |
2年間の科学研究費助成により,光学的プローブを用いないフォトクロミック近接場光学顕微鏡の開発と動的微生物の3次元形状・構造のin vivo解析についての研究を行い,下記に挙げるいくつかの成果を得ることができた。 12年度:アゾベンゼンを側鎖に含むウレタンウレア共重合体を使って,光誘起凹凸形成型の近接場光メモリを開発した。この光メモリは空間的な強度分布に対してナノスケールの高空間分解能で凹凸形成が可能であることが確認でき,分解能・記録エネルギーの点からも近接場光学顕微鏡への応用に十分適するものであることが実証された。また,この媒体は近接場光メモリのみならずホログラムメモリやビット型光メモリ等への応用も期待でき,この附帯的な成果についても現在いくつかの論文誌へ投稿中である。 13年度:12年度にて開発した凹凸形成型の光メモリを光検出部に利用して,光学的プローブを用いない近接場顕微鏡を構築した。この顕微鏡の有用性を調べるために,同顕微鏡を使ってサブミクロンサイズからナノサイズまでの広範囲な生体試料についてin vivo状態で3次元形状計測を実施した。結果,水溶液中で生きた状態のゾウリムシやミドリムシ等のサブミクロンスケールの全体形状の観察と,加えてこれら微生物の鞭毛等のナノスケール微細構造が過渡的に変化する様子までを3次元経時変化として捕らえることに成功した。 電子顕微鏡等の従来技術でナノサイズの生体試料の3次元形状計測を行うには,Agを生体試料表面に蒸着し脱水処理を施す必要があった点とそのためin vivoでの観測が不可能だった点などを考慮すると,本研究にて得られた成果は今後の微生物・細菌学等への波及効果が大いに期待できるものと考える。
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