研究概要 |
本研究では,運動巧緻性・動作熟練度を定量評価することが目的である.成果の内容を以下に要約する. 1 新しい視点からの定量化評価量の提案 運動機能の定量的評価をめざすとき,機能の評価量を設定しなければならない.運動機能が高い場合には,運動のばらつきが少なくなる,すなわち,運動の再現性が高まるものと推察される.測定対象の身体を機械システム的にとらえれば,運動機能は機械的パラメータの変動の大きさに密接に関連し,この変動量により定量化評価可能と予想される.この一連の仮説を確認するため本研究を実施した. 2 新しい定量化評価法の検証 上記評価法を具体的に実現する方法として,上腕-筋運動系の双線形モデルに対してパラメータ集合を同定する数値シミュレーションを行い,モデルのパラメータ変動の大きさとパラメータ集合の大きさの関連を調べた.その結果から,両者には相関がみられ,パラメータ集合の大きさからパラメータ変動の大きさを抑えられることが判明した.すなわち,運動巧緻性や動作熟練度を運動系のパラメータのばらつきを基準に評価できることを示した. 3 実測データに基づく解析・パラメータのばらつきによる定量化評価 利き腕・非利き腕の手指屈伸運動において筋電位と指まげ角速度のデータを計測し解析を行った.当初予想したように,運動機能が高いと考えられる利き腕においてばらつきの小さな大きな安定したデータが得られ,非利き腕においては,雑音の多い,すなわち,ばらつきの大きなデータが得られた.例外も存在してはいるが,測定方法に問題があったものと思われる.以上より,ばらつきを基準に運動巧緻性や動作熟練度を評価できる見通しを充分に得た.上記定量化評価法により運動巧緻性を比較するには至れなかったが,この実験の実施は今後の課題として研究を続行してゆく.
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