研究概要 |
昨年度までに半導体鉄シリサイド,β-FeSi_2,単結晶をGa溶液から成長することに成功し,その育成条件,電気的特性,化学的特性について明らかにした。これに加えて本年度新たに得られた主な成果は下記の通りである。 1.β-FeSi_2,単結晶をGa溶媒の他にZn溶媒,Sn溶媒からも成長できることを見いだした。またこうした実験から,数多くの金属溶媒からβ-FeSi_2,単結晶が成長できることがわかった。 2.成長溶媒によって結晶中の不純物が異なり,伝導型,キャリア濃度の制御が可能であることが判った。Ga溶媒を用いるとp型で0.03Ωcm程度の低抵抗の結晶,Zn溶媒を用いるとp型で〜10Ωcm程度の結晶,さらにSn溶媒を用いるとn型で数Ωcm程度の結晶が再現性良く成長できることが判った。 3.低抵抗のβ-FeSi_2,単結晶は室温から100K程度まで高い導電率を示すことから,高いゼーベック係数と併せて,新たに低温度領域での熱電変換素子としての利用が期待できることが判った。β-FeSi_2,は毒性が無く豊富な材料を用いているため汎用に用いる場合に非常に有用な材料と考えられる。 4.β-FeSi_2,の結晶をカーボン面に成長させることで大型の結晶が成長できることを明らかにした。実験では内径10mmのアンプルを用いているため,最大の結晶サイズは10mmφである。 5.β-FeSi_2,単結晶の硬度をビッカース硬度計で測定し,Si単結晶とほぼ同じ硬さを持つことを初めて明らかにした。 6.β-FeSi_2,単結晶を薄膜化する技術を開発し,単結晶を用いた光透過測定を初めて行った,その結果,これまで薄膜結晶で報告されている多くの実験結果と異なり,β-FeSi_2,は間接遷移型半導体であることを明らかにした。
|