チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)の微細な構造を、ゾル-ゲル法により作製する方法、およびその圧電応用について検討を行っている。 特に本年度は、ゾル-ゲル法における焼成がバッファ層に及ぼす影響について考察した。この結果、仮焼成時のみに酸素を導入し、本焼成時の酸素導入を行わないことで、バッファ層として用いている白金の劣化を抑制しつつ、良好な結晶性と安定した圧電性を有するPZT薄膜が実現されることを確認した。 また、これまでに本申請者らが提案しているPZT前駆体ゲルに対する直接パターニング技術の圧電応用例として、音響多層薄膜上にPZTの微小ディスク膜を形成した構造を有する厚み振動共振子の試作を行った。具体的には、スパッタにより成膜したZnO薄膜とSiO_2薄膜の積層構造上に圧電性を有するPZTディスク膜を作成することに成功した。今後、分極方法等について検討を行い、5GHzを超える周波数帯での共振器実現を予定している。 これらに加え、GHz帯における表面弾性波デバイス実現を目的として、超高音速基板であるダイヤモンド基板上へのPZT成膜についても検討した。検討の結果、一般に用いるバッファ層(Pt/Ti)では、成膜時に剥離を生じる為、ダイヤモンド基板上へのPZT成膜が困難であることを確認した。これに対して、バッファ層を(Pt/Ti/Cr)の3層構造とすることで、剥離を抑制できることを明らかにした。これらの成果は、GHz帯におけるPZT圧電応用において、基礎的な知見を与えるものと考えられる。
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