研究概要 |
昨年度の追試実験よりCo/Cu多層膜の巨大磁気抵抗特性のばらつきは、膜の表面平坦性に関係することが示されたので、Cuバッファー層厚を5〜15nmと変えて特性評価を行った。Cuバッファー層の表面平均荒さが0.15から0.25nmと増加するに従い、磁気抵抗変化率MR ratioが4.5から0.5%と急激に減少した。Cuバッファー層中の酸素含有量が膜厚に伴って増加し、これが平坦性を劣化させ、巨大磁気抵抗効果を損なう原因であることが明らかとなった。次にα-Fe_2O_3層のバイアス特性を調べるためにNiFe層との積層膜を作製した。Si/α-Fc_2O_3(50nm)/NiFe(5nm)二層膜においてはバイアス磁界H_<ex>=63Oe、保磁力H_c=138Oeであったが、Si/NiFe(5nm)/α-Fe_2O_3(50nm)二層膜でH_<ex>=5Oe、保磁力H_c=10Oeと著しくバイアス特性が劣化した。これはSi基板上に直接堆積したα-Fe_2O_3層の結晶性が優れるごとに加えてNiFe層との界面で平坦性に優れることが理由と考えられた。以上を基にスピンバルブ(Si/α-Fe_2O_3/(NiFe, Co)/Cu/(NiFe, Co)を作製した。NiFe層を用いたサンプルではMR ratio=5%とCo層を用いたサンプルのMR ratio=16%に比べて巨大磁気抵抗率は小さいものの、磁界感度は0.6%/OeとCo層を用いたサンプルの0.3%/Oeより優れていた。このスピンバルブにおいても表面平坦性が1.4nmから0.8nmへと減少するに従い、MR ratioが増加する傾向が見られた。本研究により酸化物反強磁性層を用いたスピンバルブ素子で大きなMR ratioおよび優れ磁界感度を得るためには反強磁性層の結晶性や膜面平坦性の向上が極めて重要であることが明らかとなった。
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