研究概要 |
本年度は,GaAs/AlGaAs単一量子井戸構造を有する基板表面に,フォトリソグラフィならびに電子線露光装置とウエットケミカルエッチングを用いて,周期が100nm〜3μmのラインアンドスペース(L/S)構造を作製し,その後分子線エピタキシー法によりAlGaAsの再成長を行った.同様に,GaAs基板上にL/S構造を作製し,その後GaAs/AlGaAsの変調ドープ単一量子井戸構造の作製も試みた. まず最初にエッチング液にはこれまで硫酸系のものを用いていたが,エッチング後に綺麗なファセット面が得られなかったために,エッチング液をアンモニア系(NH_4OH:H_2O_2:H_2O=2:1:10)を用いることで明瞭なファセット面((111)面)を得ることが確認出来た. その後,量子井戸構造にAlGaAs層を再成長した場合では,成長中のAlGaAs分子のマイグレーションが余り起こり難いために,長時間の再成長表面では凹凸が激しく結晶性はよくなかった.しかしながら極短周期(100nm)のL/S構造において,短時間のAlGaAs再成長を行うと,長時間再成長したものよりも凹凸が激しくなく,この試料において磁気輸送特性を測定するとシュブニコフ・ド・ハース振動が観測されたために,量子井戸構造内のキャリアは再成長により枯渇することなく存在し,キャリアとして機能することがわかった. 一方,GaAs加工基板上に,まずGaAsだけを成長した場合では,綺麗な表面が得られるだけでなく,V/III比の条件によってはファセット面に到着したGaAs分子が(001)面にマイグレーションし,メサ状になった(001)面のエッジ部分において(111)面と(311)面に囲まれた過剰成長(いわゆるリッジ成長)が発生することが分かった.同様に,加工GaAs基板上に再成長により量子井戸構造を作製し,フォトルミネッセンス測定を行うと,量子井戸からの発光が確認され再成長においても比較的良好な量子井戸構造が作製されることがわかった.
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