研究概要 |
ポーラス(多孔質)シリコン中のシリコンナノ構造は,堆積法やイオン注入法により作製されたシリコン微粒子とは異なり,ミクロな光学異方性をホすことが知られている.本研究はこのミクロな異方性を応用した光デバイスの開発を目指し,基礎および応用の両面から検討を進めてきた.今年度は特に,直線偏光照射法によるスタティックなマクロ異方性の形成とその機構について詳細な研究を行い,その主な成果として以下のような結果が得られた. 1.直線偏光照射下での陽極化成による光学異方性の誘起 ポーラスシリコンを作製するための電気化学的陽極化成の際に直線偏光を照射することにより,マクロな光学異方性の形成を試みた.この方法はPolisskiらにより提案されたものであるが,昨年度の研究では異方性の形成は認められなかった.ところが今年度,比較的高い電流密度で陽極化成を行ったところ,非常に顕著な光学異方性の発現を確認することができた.興味深いことに,ここで得られた異方性の方向はPolisskiらの結果とは90度ずれており,彼らの提案した光化学エッチングのみに基づいたモデルを見直す必要があることを示した.陽極化成電流密度依存性とも合わせて考えると,電気化学エッチングが重要な働きをしているものと考えられる. 2.光学異方性発現のメカニズム 上で述べた違いを生じる原因を明らかにするため,暗所での陽極化成により作製した試料に直線偏光による光化学エッチングを施した.すると,これらの試料はPolisskiらの報告と同じ方向に光学異方性を示した.この結果は,Polisskiらのモデルは光化学エッチングが支配的な場合にのみ適用されうることを示している.電気化学エッチングが支配的な場合は全く異なる結果が得られるとのモデルを新たに提案した.
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