研究概要 |
決定論的カオスが, 実在系に偏在する現象として認知されるに伴い, カオス時系列を解析するための新しい信号処理技術の開発が急ピッチで進んでいる。これまでに, 様々のカオス時系列解析手法が開発され, その有効性が確認されてきたが, 従来型のカオス時系列解析は, データの「定常性」を仮定した手法に基づいているため, 実在系から計測されるカオス時系列の定常性を検定する手法を確立することが急務となっている。 このようなカオス時系列の非定常性の問題に関して, 昨年度は, 「非線形予測子パラメータ族によるカオス時系列の非定常性解析手法」を開発した。今年度は, 本開発手法を実在系のデータに応用し, 以下のような研究成果を得た。 1)「非線形予測子パラメータ族によるカオス時系列の非定常性解析手法」を病理音声信号に応用し, 非定常信号から定常な病理音声信号を自動抽出し, 非線形性の強さを計ることによって, 病理音声の自動検出システムの開発を行なった。フンボルト大学・理論生物グループに短期滞在して共同研究を行い, 病理音声解析の専門家の意見を取り入れることによって, 実用性の高いシステムを構築した。 2)乳幼児の心電位(ECG)信号の非定常非線形解析を行い, 心拍異常がリミットサイクル的発振現象によって起こることを確認した。ポツダム大学・非線形力学グループに短期滞在し, 共同研究の形式で研究を進めた。
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