研究概要 |
近年情報理論の分野で注目されているターボ符号・復号は,既存の誤り訂正符号器とインターリーバを用いて符号化し,受信側では復号出力をターボエンジンのように帰還し,それを繰り返し用いて特性を改善する符号化・復号方法である.ターボ符号の応用として,次世代通信や衛星通信,磁気記録などが検討され,最近では,光ファイバ通信や赤外線無線通信などの光通信への応用も期待されている.視覚への安全性や消費電力の観点から出力光パワーに制限のある赤外線無線通信等の光通信分野では,低いエネルギーで優れた誤り率特性を示すターボ符号の適用が期待されている.赤外線無線通信では,ベースバンド変調であるオン・オフキーイング(OOK)やパルス位置変調(PPM)がよく用いられる.しかし,これまでターボ符号のOOKやPPMへの適用に関する検討はほとんどなかった. 平成13年度は,ターボ符号をOOKやPPMに適用する際の復号アルゴリズムについて引き続き検討した. 平成12年度に検討したアルゴリズムは,最大事後確率(MAP)復号を実現するBCJRアルゴリズムを修正した修正BCJRアルゴリズムであった.平成13年度は,新しく軟出力ビタビ復号(SOVA)アルゴリズムについて検討した.OOKの場合には,受信器出力から一定値1/2を引き算し,通信路値の形を変形することで実現した.また,PPMの場合には,特に二元のPPM(BPPM)に着目し,1フレーム中の各スロットでのサンプル値を一方からもう一方を減算することにより変形し,その結果,通信路値の形を変形して実現した. 加法的白色ガウス雑音(AWGN)通信路において計算機シミュレーションにより評価し,提案したアルゴリズムは正しく動作し,ターボ符号を光通信に提要する方法を明らかにした.また前年度に検討したMAPアルゴリズムと比べて,SOVAアルゴリズムは特性の劣化が多少見られるものの,より簡単なアルゴリズムで実現できることを確認した.さらにこれらアルゴリズムを用い,光空間通信に適用した場合の特性を計算機シミュレーション及び理論解析により評価し,その結果,ターボ符号の光通信における有効性を確認した.
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