研究概要 |
1.可逆符号化方式の実装と評価 レートを最小化する予測器を用いた可逆符号化方式を開発し,その性能評価を行った.前年度の検討より,レートを最小化する予測器を設計するには,予測誤差の分散の逆数で重み付けされた2乗誤差和を最小化すれば良いことが明らかになっている.この予測誤差の分散は一般に未知であるため,近傍画素のコンテクストモデリングによってその値を推定しているが,予測誤差を符号化する際もこの分散値に基づいて画素単位で可変長符号を切り替えることにより適応的なエントロピー符号化が可能となる.実際にこのアルゴリズムをC言語で実装し,多数のテスト画像を対象として符号化性能の評価を行った.その結果,提案方式は国際標準方式のJPEG-LS方式に対して約0.30bits/pel低い符号化レート達成するなど,可逆符号化方式として極めて高い水準の性能を有していることが実証された. 2.カラー画像符号化への応用 RGB3信号で構成されるカラー画像は各色信号間に高い相関を有しているため,これらを効率良く符号化するためには,何らかの方法で上記相関を除去することが必要である.非可逆符号化の場合,RGB信号を別の色空間に色座標変換する方法が一般的であるが,可逆符号化では色座標変換に伴う歪の発生が問題となる.本研究では,ラダー回路網を用いた可逆変換法に着目し,可逆符号化のための色座標変換アルゴリズムを開発した.予測誤差の情報量が最小となるように予測器とラダー回路係数を交互に最適化することにより,RGB信号を直接符号化する場合に比べて0.15〜1.90bits/pel符号化レートが削減された.また,JPEG-LSと比較して0.68〜2.31低い符号化レートを達成するなど,カラー画像の可逆符号化に関しても提案方式の有効性が明らかとなった.
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