研究概要 |
本研究は,バイオリン演奏を具体例として,感性が身体運動に与える影響について明らかにすることを目的としている.本年度は,昨年度構築した動作計測システムを用いて,バイオリン演奏熟練者の演奏動作分析を行い,感性情報である音色表現語と演奏動作の関係を明らかにすることを目的とした.また,人間型マニピュレータにより,バイオリンの開放弦演奏を目指した. 動作計測実験の被験者は,アマチュア演奏家2名,職業演奏家2名の計4名とした.計測項目としては,右腕各関節角度,手関節と肘関節の位置,および弓圧等とした.右腕の各関節角度は,手背および上腕後部に取り付けた磁気式3次元位置計測用センサのデータより算出した.また,弓圧は,弓に取り付けたひずみゲージより算出した.実験方法としては,7対14個の音色表現語にそれぞれ「非常に」という言葉を加えた,合計28個の音色表現語を演奏者に提示し,音をイメージし,D線を開放弦下げ弓および上げ弓で演奏してもらった.また,その際の演奏者が浮かべたイメージを推定するため,アンケート調査も実施した. 各関節角度を調べたところ,肩関節内外旋に顕著な傾向が見られた.例えば,「楽しい」と「悲しい」のときの関節角度を分析すると,「楽しい」の方が内旋角度が大きかった.しかしながら,同時に弓圧も大きくなっており,これは,感性情報による影響と言うよりは,弓圧というパラメータを変化させたために起こった現象であると考えられる.その他の関節角度については,明確な傾向は見られなかった.これより,感性は,弓圧等の決定に大きく影響し,身体動作そのものには直接大きな影響は与えていないと考えられる. また、上記分析と同時にマニピュレータによるボーイング動作の実現を目指した.7自由度人間型のマニピュレータに,弓を持つための簡易ハンドを搭載した.そして,開放弦の演奏法によりバイオリン演奏を行った.
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