研究概要 |
デイスプレイを介して人間に情報を与える際に,画像情報の状態や目的によっては画像が短時間呈示になる場合が生じる。そこで本研究では,映像情報の視覚処理で主要な役割を果たしている輝度と色の刺激の処理系とその情報統合に着目して人間の時間特性を明らかにした。前年度は,輝度のみの刺激について時間的な応答変化を示す刺激応答関数(輝度インパルス応答関数)を知覚閾値測定データよりモデルを用いて導出し,輝度単独の情報処理における時間特性を明らかにした。本年度は,同様の手法をもちいて,色変化のみの刺激についての刺激応答関数(色インパルス応答)を測定し,特に空間周波数の影響について検討した。 各実験データは,輝度の場合と同様に,色インパルス応答導出の場合でも,手法,実験装置およびモデル解析が有効であることを示した。実験結果は,興奮相のピークまでの時間で定義される応答速度は,単純Gabor関数〜3.12cpdの領域でほぼ一定(〜120msec)であるが,3cpd〜4cpdを境にしてそれ以上の空間周波数領域(実験した4.01〜5.79cpdの領域)では,ほぼ一定の〜50msecに上昇することが明らかとなった。このことは輝度インパルス応答の場合と同様に,高空間周波数の方が応答速度は速いことを示している。ただし,輝度インパルス応答の場合とは異なり,応答速度が最速ピークとなる空間周波数は見られなかった。 以上より短時間での色刺激呈示においては,4cpdよりも高い空間周波数(但しコントラスト知覚閾値限界よりも低い空間周波数)で主として構成される刺激を用いた方が,高速な視覚系の処理が期待できることが明らかになった。サインや警告表示などでの応用が期待される。
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