研究概要 |
本研究では,材料の微視構造と構造物レベル(巨視)のスケールとの相互作用を考慮できるマルチスケール平均化手法を用いて,非均質体の塑性,不安定現象の解析手法の確立を目的とする.それに先駆けて,微視構造に幾何学的不安定が起こるような材料であるセル構造材料に対するマルチスケールモデリングの適用を試みた. 対象とする問題で考えるポテンシャルは凸性が保証されないため,まずnon-convex homogenizationの理論に基づくマルチスケール解析の定式化を行った.また,代表体積要素に含まれる単位周期構造の数は起こりうる分岐モードを拘束するため,無限周期構造に起こりうる分岐モードを予測しなければならない.ブロック対角化法によって予測できることを示した.そこで,群論的分岐理論に基づき,その増分釣合式をブロック対角化し,それにより分岐モードを予測し,非線形マルチスケール解析におけるミクロ問題の対象領域である代表体積要素に含まれるべき単位周期構造の数を決定する方法論を構築した.具体的な数値例として,正六角形ハニカムを取り上げ,ユニットセルに含まれるべき単位周期構造の数を明らかにした. 次に,非線形ミクロ-マクロ問題間の繰り返し収束アルゴリズム,それと整合する接線剛性について考察した.同時に,ミクロ構造の幾何学的不安定とマクロ問題における平均化材料特性の関係について考察し,マルチスケール法による材料不安定のモデル化の可能性を見いだした. 本研究の成果により,これまで経験的にしか取り扱うことのできなかった材料不安定問題に対して,微視構造の不安定を加味したマルチスケールモデリングの適用性が示された.
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