研究概要 |
塩害や中性化によるコンクリート構造物の早期劣化現象が深刻化する中で、従来からの補修工法に代わる根本的な手法として、電気化学的補修工法が開発され、注目を集めている。ただし、電気化学的補修工法を反応性骨材を含むコンクリート構造物に適用した場合に、通電処理によるアルカリの集積により、アルカリ骨材反応によるコンクリート膨張が促進されることが懸念されている。そこで本研究では、塩害、または、中性化により劣化したコンクリート構造物が反応性の骨材を含んでいるという複合劣化状態を想定した供試体を用意し、この供試体に電気化学的補修工法であるデサリネーションや再アルカリ化工法を適用した後に補修効果を確認するとともに、処理後のアルカリ骨材反応によるコンクリート膨張挙動を検討した。 この結果、得られた結果の概要は以下の通りである。 1.アルカリ骨材反応によるコンクリートの膨張抑制効果を期待して、リチウム系水溶液を電解液として用いた場合においても、デサリネーション、または再アルカリ工法により十分な脱塩効果、または、再アルカリ化効果が得られた。 2.リチウム系水溶液を電解液として用いることにより、通電処理によるコンクリート中ナトリウム集積量を低減することができるとともに、リチウムイオンをコンクリート中に浸透させることができた。 3.特に塩害や中性化による劣化程度が厳しい場合に、リチウム系水溶液を電解液として用いることによる処理後のコンクリート膨張量抑制効果が大きくなった。 4.処理後1年間の促進アルカリ骨材反応静置後も,通電処理による補修効果は持続しており,本工法が構造物としての耐久性向上に有効であることが分かった。 今後は、長期的なモニタリングを継続し、反応性骨材を含む構造物への電気化学的補修工法適用条件を提案したい。
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