研究概要 |
1999年8月のトルコ・コジャエリ地震と同年9月の台湾・集集地震では,数mの大断層変位による社会基盤施設の被害が多数生じ,特に,集集地震では橋台や橋脚の倒壊,単純桁の落下が8橋の橋梁で報告されている.本研究では,1)このような地盤の大変位による橋台や橋脚の倒壊,および桁の落橋メカニズムを数値シミュレーションによって解明し,2)数mに及ぶ大断層変位が生じても橋梁としての機能を保持できる新構造形式ならびに大断層変位を想定した橋梁構造物の耐震設計法の模索を試みた. 平成13年度には上記2)について,大断層変位に対応できる構造形式として可能性のあるマルチヒンジ免震構造に対する検討を行った.マルチヒンジ免震構造とは,橋梁全体系を構成する構造要素の塑性ヒンジ化によって地盤で生じた断層変位を分散させようという発想である.もともと,免震橋梁では免震支承でのみ塑性化を図り,上下部構造の地震応答の低減を目指す構造形式であるが,地盤上の大変位に対応するためには免震支承の塑性化のみならず,上部構造を支える橋脚や基礎においても塑性ヒンジ化を許容しなければならない.以上より,免震橋梁において免震支承と下部構造が同時に塑性化した場合の非線形地震応答の相互作用による影響について,別途行った繰り返し載荷実験とハイブリッド地震応答実験による実験データを活用し,解析的に検討を行い,地震入力において大変位が生じた場合の構造要素間の変形の分担を平均相互作用係数という指標で評価し,マルチヒンジ免震構造を達成するために必要な免震支承-下部構造間の塑性ヒンジ化の度合いについて明らかにした.同時に,現行の免震設計においてはこれらの構造要素間の非線形応答の相互作用による影響を評価できていないため,この点について前述した平均相互作用係数と関連づける方法について提案した.
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