研究概要 |
地震応答解析のような時間領域の動的解析においては,しばしば,高周波ノイズがトリガとなり,解の発散という問題が生じる.特に,有限要素法に代表されるような自由度の大きい非線形動的解析では少なくない問題である.これを防ぐため,高周波成分に減衰を与える等の対策がとられる.現在広く用いられているニューマークのβ法,ウィルソンのθ法等は高周波成分を低減させる減衰効果を有している.しかし,これらの手法は減衰の関数形の制約等により,実現できる減衰特性が不十分な場合もある. このような背景にかんがみ,本研究では,任意の周波数依存性を有する減衰を付加することができる時間積分法を開発した.これは,時間積分を行うプロセスにおいてディジタルフィルタを施すプロセスを組み込むことにより,解析自体に減衰を付与する手法である.ディジタルフィルタの減衰特性を変化させることにより付与する減衰の特性を調整でき,さまざまな減衰特性を実現することが可能となる. 開発した手法は,減衰特性を比較的自由に調整できる.これにより,対象とする問題や解析条件に応じた合理的な設定が可能となり,計算時間ステップ等の条件を合理的に設定することが可能になった.また,変位,速度などの変数ごとに異なるフィルタを施す等の新たな解析も可能となった. さらに,時間積分法の有する減衰特性をディジタルフィルタの形式で統一的に解釈する方法も提案することができる.これにより,既存の時間積分法における変数の物理的な解釈をより合理的なものにし,本研究で開発する手法等と統一的に取り扱うことが可能となった.
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