研究概要 |
土木学会地震工学委員会の減震・免震・制震小委員会からの要請により,「減震・免震・制震構造設計法ガイドライン(案)」の分担執筆を行い,本研究で開発した免震装置を紹介した.その過程で,この装置の実用化のためには,まずその性能を簡便な形で表現することが必要であることが明らかになった.そこで装置の回転および水平方向に対する剛性を,装置性能を決定するパラメーターである,サイズ(高さと幅),側面のくぼみ量,鋼板の厚さの4つのパラメーターで表現することを試みた.まず,これら4つのパラメーターを個々に変化させて,装置の物理的な考察を行ったところ,回転剛性については側面の鋼板のくぼみが小さい場合にはほぼ鋼板のみの剛性に等しいが,くぼみ量が大きくなるにつれ,ゴムの影響が顕著になることがわかった.くぼみ量の代わりにそれを装置高さでわった量を考えることでサイズの影響を包含した考察が可能になった.一方,水平方向剛性については,くぼみが0の時にはゴムのみの剛性に等しくなるが,くぼみ量が大きくなるにつれ鋼板の影響が顕著に現れるようになった.これは鋼板に大きな軸方向力が作用するためである.回転の場合と同様,くぼみ量を装置高さでわった量を考えサイズの影響を取り込んだ.以上の考察を元に,回転,水平方向の剛性の近似表現を試み,それに成功した.またこれら4つのパラメータを説明変数,剛性の値の対数値を目的変数にとり重回帰分析を行った.その結果,やはり良好な近似結果が得られた.免震効果を確認するため,導いた近似表現を中柱端部に適用し,トンネルに加力した.その結果,中柱に発生する断面力の低減が見られたが,中柱以外の部材の断面力は若干増加し,またトンネル全体としての変形量も増加した.装置の実用化のためには,その性能を実験によって検証することも重要であり,現在そのための準備を進めている.
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